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講師問題 教育に臨時はない、講師問題政策(04/03)


講師問題討議資料(2004.3改定)

「教育に臨時はない」−私学における講師問題を考えるために-

1998・7 全国私教連
2004・3一部改訂検討

はじめに

今日、長引く不況と本格的な生徒減少、私学助成をめぐる厳しい情勢のなかで多くの学園で学園の将来不安を煽る思想攻撃と一体的にリストラ・合理化攻撃による教育・労働条件の切り下げや解雇・権利攻撃が強まっています。

全国私教連は、「講師問題」に対する基本方針を第16回臨時大会(96・3)で決定し、今日までの闘いのなかで常勤講師の「期限切れ」を口実とした「雇い止め(解雇)」攻撃に対する最高裁の勝利判決(滋賀・光泉中高暮石闘争、97・2)や差戻し判決(兵庫・神戸弘陵浅野闘争、90・6)、そして各学園における常勤講師専任化の実現など大きな前進と到達点を築いてきました。

また、後述するように宮城・聖ドミニコ学園清水先生に対する仙台地裁の判決(1986・8)で、事実認定での不当な判断などにより解雇撤回・職場復帰の要求は不当にも認められませんでしたが、非常勤講師にも教育基本法6条2項(教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない)が適用され教員としての身分保障を受けるとの判断は引出しています。

さらに、ILO・ユネスコの「教員の地位に関する共同勧告」で「教職における雇用の安定と身分保障は、教員の利益にとって不可欠であることは言うまでもなく、教育の利益のためにも不可欠なものであり、たとえ学校組織、又は学校内の編成に変更がある場合でも、あくまで保障されるべきである」と規定されているように教員の身分保障に関しては国際的にも特別に強調されているのです。

しかし今日、「講師」の身分保障問題は、有期雇用契約の上限三年までの延長などの労働基準法改悪や労働者派遣法の改悪、大学教員への任期制導入などとも関わりますます危険になってきています。また、生徒実態の急激な変化や授業「困難」の問題など、教育現場がかかえる課題は一層大きくなり、ゆきとどいた教育をすすめるための教育条件整備はますます重要な課題になっています。 以下、改めて講師問題に対する具体的な方針を提起し、各県・各単組・分会での積極的な論議をよびかけるものです。



T.急増する専任不補充と常勤講師、非常勤講師

文部科学省の調査(2002年度 文部科学省)によると「本務教諭一人当たり」の「生徒数」は、公立高校の14.5人に対し、私立高校は20.3人と、私立高校の教師は公立の教師の1.4倍の生徒を担当しています。

文部科学省の調査でみると、1997年度から2002年度にかけて、教員一人当りの生徒数は21.7人から20.3人に減少しているものの、新カリキュラムにともなう講座数の増加、学科やコースの多様化と、専任教員の退職不補充などによって常勤講師数は3,812人から4,438人と大幅に増加し(116.4%)、非常勤講師の数も31,713人から31,917人に増加(100.6%)しています。教員一人当り生徒数の減少にしても、「常勤講師」は専任教員としてカウントされているため、実態はより深刻と言わざるをえません。

こうした実態は、私立高校の教育・労働条件の劣悪さを代表的に象徴するものとなっています。そのことは既に第15回定期大会の議案で指摘したように大阪のR高校では、93年度全教員96名のうち専任教諭は44名(内10名が管理職)で、残り52名はすべて期限付雇用(「契約専任」28名、契約期間2〜3年。「専任講師」7名、契約期間1年。「常勤講師」4名、契約期間1年。「非常勤講師」13名、契約期間1年)であことからも明らかです。さらにここ数年、各県・各職場 で急増している専任教職員不補充・不採用や時間講師を人材派遣会社に依頼したり、人材派遣でなく請負(偽装請負)で教師の派遣を行っている学園が現れるなど、私立高校における「講師」問題はますます深刻になっているといえます。

こうした状況は、講師の雇用・身分・生活問題はもとよりゆきとどいた教育を保障する教育問題としても看過できない重大な問題をはらんでいるといえます。


U.「講師」の最大の要求は雇用不安の解消と待遇改善

「講師」問題を考える上での最重要課題に雇用不安の解消と待遇改善があります。今日、講師の雇用問題の最大の焦点としては「期限付採用」の「常勤講師」問題があり、先にも指摘したようにここ数年期限切れを口実とした雇い止め(解雇)攻撃が激化し、この問題が経営者側との一大争点になっています。また、劣悪な待遇問題では経営者が「講師」を採用する最大の理由が人件費抑制にあることは明らかであり、講師の待遇を改善し、講師を採用しても人件費抑制に効果が上がらない状況をつくることは講師問題の解決にとってきわめて重要な視点だといえます。

1.経営側顧問弁護士の「講師」問題対策

経営者側の顧問弁護士である俵法律事務所編集の『私学経営』のなかで「期限付教職員の採用と雇止め」について「1)就業規則等で、期限付職員の採用、雇用期間、職務内容等を明確にしておく。
2)契約に当たっては、契約書又は辞令等で期限付雇用であることを明確にしておく。
3)採用面接の際に期限付雇用であることを説明するとともに、不用意に契約更新の期待を持たせるような発言をしない。
4)雇止めの職員と更新の職員が生じる場合には、人選の合理的説明ができるよう、勤務評定その他の勤務成績の記録を残しておく。
5)なるべく期限付契約の更新を繰り返さないようにする。
6)やむを得ず更新又は再雇用する場合には、必ず契約書又は辞令をもって行なう」ときわめて具体的にその対策を指摘し、聖ドミニコ学園や神戸弘陵など幾つかの判例を経営者側の立場から解説して例示しています。

2.「講師」問題での貴重な到達点

一方、私たちはこうした攻撃に対し、教育条件改善要求と結合した職場闘争とともに裁判闘争においても以下に紹介するように、最高裁判決をはじめ貴重な勝利判決・命令を数多く勝ち取ってきました。この到達点は、私たちが「常勤講師」問題を闘う上で大きな武器となるものです。これらの成果をそれぞれの学園に創造的に適用しつつ大いに活用することが今日きわめて重要になっているといえます。

  1. 滋賀・光泉中高暮石先生の最高裁勝利判決 判決・命令集 第4集参照)
    採用時(1年間の期限付雇用)の説明、就業規則改訂の時期、求人依頼書の記述の内容、試用期間中における授業評価、過去の職場における評価、遅刻問題など学園側の解雇理由をことごとく否定し「解雇権の乱用」と断定した地裁判決が最高裁で確定。経営者は他の口実で再解雇、現在闘争中。

  2. 兵庫・神戸弘陵浅野先生の最高裁逆転「差戻し」判決 判決集 第4集参照)
    地裁、高裁で敗訴した判決に対し、最高裁は「その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間でなく、試用期間であると解するのが相当である。」「これを解約権留保付契約であると解するのが相当である。そして解約権留保付雇用契約における解約権の行使は、解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当として是認される場合に許されるもの」として、本件契約についての原判決には、「法令の解釈を誤り、審理不尽、理由不備についての違法があり、本違法は判決に影響がある」として原判決を破棄し大阪高裁に差し戻した。勝利和解で職場復帰。

  3. 神奈川・三浦高校佐藤先生の横浜地裁勝利判決 判決集 第4集参照)
    「新規教職員を初年度非常勤講師、次年度以降専任教諭として雇用する場合、(中略)被告は、初年度の非常勤講師として勤務する一年間を、次年度以降専任教諭として引き続き就業させることが相当であるか否か、その適正を判断するための期間としても利用し、運用していた。(中略)初年度非常勤講師、次年度以降専任教諭とする雇用形態は、必ずしも臨時的な教職員としての性格で一貫した制度とはいえず、継続的雇用形態の実質を備えた変則的なものである。」として地裁勝利。勝利和解で職場復帰。

  4. 宮城・聖ドミニコ学園清水先生の仙台地裁判決
    非常勤講師の「雇い止め」問題で闘った清水闘争は、事実認定での不当な判断にもとづく不当判決によって解雇撤回・教壇復帰は認められませんでしたが、非常勤講師の教師としての身分保障をめぐっては以下のような幾つかの貴重な判断を獲得しています。
    第1は非常勤講師も教育基本法6条2項により教員としての身分保障を受けるとの判断です。
    第2は現在の非常勤講師について、常時勤務に服さず雇用期間の定めのあることが、様々な教育上の弊害を生む一要素となる可能性があり、教育的配慮からはすべての教員を常勤勤務に服し継続的雇用を前提とする専任教師にすることが望ましいとの判断です。
    第3は非常勤講師の期間の定めに何ら社会的合理性がなく、その定めが単に解雇の制限を初めとする労働保護法規を潛脱する意図のみに基づくものである場合には、期間の定め自体を無効とすべきか否かを検討する余地がある旨の判断を獲得しています。
    第4に期間の定めある契約であっても満了毎に更新され、あたかも期間の定めのない契約と実質的に変わらない状態にある場合は、解雇にあたり、解雇規制法理を類推適用するとしています。
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V.教育・学校づくりの課題と「講師問題」

様々な職場から、生徒実態の変化や教育「困難」の強まりが報告されています。

授業中のとりとめもない私語や化粧、携帯メール、立ち歩き、教師への暴言その他、いわゆる「授業困難」と言われる現象に、私たちは直面しています。不登校や不登校の傾向も示す生徒も減少する気配はなく、残念なことにイジメや少年事件もあとをたちません。子ども達は、自己肯定感が持てずにとても疲れている、といった報告もされています。

一方で多くの職場は、特進路線の一層の強化と生徒管理強化、教職員に対する管理の強まりの中で、生徒の内面やその背景にあるものを受けとめ、共同で生徒一人ひとりをを受けとめていくゆとりを奪われています。バラバラにされた教職員が、自己防衛的なカラに閉じこもりながら、失敗できないプレッシャーの中で疲れているといった状況が広がりつつあります。

共同で教育実践にかかわるべき職場の共同化の問題では、管理強化や考課査定などのもたらす分断化とともに、短期雇用の常勤講師が大幅に増加し、非常勤講師も増えるという現状の中で、管理職以下教師の「階層化」といった状況が生まれており、共同を阻む大きな要因になっっています。

そうした状況の中で、講師の要求として教育実践の上で専任教員と共同したい、生徒実態や学校の現状について、可能な情報をつかみながら実践したいという要求が強まっています。これは、学校教育全体から見れば、講師も含めた教育にかかわる共同体制をどうつくっていくか、職場の共同の力で全体の教育力をどう高めていくかという問題であり、当然の重要な要求です。

その点で、組合が専任教員と講師という立場の違いを越えて職場の教職員全体を大きくつなぎ、教育をすすめる上での共同関係をつくりながら、講師の多様な要求や思いを受けとめていくことが重要です。

同時に、生徒実態の変化や新カリキュラムの実践を実り多いものにし、職場を活性化していくために、専任教員増、持ち時間減などの教育条件改善の課題はきわめて重要な課題になっています。

こうした、教育実践をすすめる教師の共同化の視点、教育改革をすすめ、職場を活性化するための教育条件改善の重要性からも、「講師問題」を重視して取り組むことが求められています。


W.「講師」の定義と「講師問題」を闘う基本方針

私たちは、第16回臨時大会で「講師問題」に対する基本方針を決定しました。その方針は、「講師問題」を講師の雇用・身分・生活問題として重視するとともに、ゆきとどいた教育を保障する教育条件(教育問題)としても重視し、この二つを統一的にとらえるという立場を堅持するものでした。そして、「講師」を専任教職員の身分保障のための安全弁にするというような立場は絶対に許されないことであり、ともに働く仲間としての連帯と団結、ゆきとどいた教育をすすめるための教育条件改善の立場を堅持するということでした。

こうした観点から、以下、第16回臨時大会の決定に幾つかの必要な修正を加え、私たちの「講師」問題に対する基本方針を改めて提起します。

1.「講師」の定義

  1. 常勤講師: 基本的に専任教諭と同等な勤務形態でありながら雇用に期限が付けられる等専任として雇用されていない講師をさします。

  2. 非常勤講師: 時間講師など勤務形態が専任教諭と異なる形態で雇用されている講師をさします。

2.私学における「講師」問題の基本性格

今日の私学における「講師」は、基本的に私学経営者の安上がり教育政策による人件費抑制と不安定雇用教職員をつくることによって教職員集団を分断し、職場支配の手段にするという性格をもっています。

3.「講師」問題を闘う基本的な視点

  1. 「講師問題」を講師の雇用・身分・生活権問題として重視するとともに「教育に臨時はない」という視点から教育問題として位置づけ、この二つを統一的にとらえて闘います。

  2. 専任増による教育・労働条件の改善(当面の要求としてクラス数×2名の専任教諭の確保)の要求と結合して闘います。

  3. 専任教諭と同等の勤務形態でありながら、雇用、労働、賃金条件等に根本的な格差のある「常勤講師制度」は「教育に臨時はない」との位置付けからしても即時廃止を要求して闘います。

  4. 希望する「常勤講師」の専任化を要求します。

  5. 「非常勤講師」については各学園における状況を踏まえて対処しますが、基本的には希望する「非常勤講師」の専任化を要求します。

  6. 「期限付採用」の「常勤講師」を各県の経常費補助の配分対象から外すことを基本に外さない場合でも専任教諭との間に厳しい傾斜をつけるよう要求します。

  7. 常勤・非常勤講師の雇用の安定化と待遇改善を要求します。

  8. 常勤・非常勤講師の団結権を保障するよう要求します。常勤・非常勤講師の組合員化を基本とし、組合規約上に不備のある場合はその規約改訂によって常勤・非常勤講師の組合員化を追及します。但し、条件によっては講師組合の組織化を推進します。

4.常勤・非常勤講師の雇用の安定化と均等待遇実現のための方針

  1. 「整理解雇4要件」を適用するなど不当な契約更新拒否を許さず雇用不安の解消をめざします。

  2. 差別待遇反対、同一労働同一賃金・均等待遇の実現をめざし、常勤・非常勤講師の賃金を引き上げ、休暇中の賃金等を保障させます。一時金、退職金、研究図書費等諸手当の新設および待遇の改善を要求します。専用の机・ロッカ−の保障等をはじめとする種々の待遇改善を求めます。

  3. 希望する常勤・非常勤講師の私学共済への加入を保障させるなど社会保障権の確立を求めます。

  4. 希望する非常勤講師の各種会議への参加および手当の保障を求めます。

  5. 研修の機会を保障するとともに、それに伴う費用の支給を求めます。

  6. 組合加入・組合づくりの自由を保障し、団結権と団体交渉権の確立をめざします。

  7. 非常勤講師の次年度契約に関する決定を遅くとも12月末までに行なうよう要求します。

おわりに

以上の方針をもとに、「講師」問題に対する全国私教連中央執行委員会としてのとりくみを強化するために複数の担当執行委員を配置することとします。各県・各職場においてもぜひ「講師」問題での論議を深めるとともにそのとりくみを強められることを強く要請するものです。

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