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第35回定期大会 情勢と方針(07/03/17・18)


一、当面する情勢の特徴

1.教育基本法改悪をめぐって

(1)改悪教育基本法の問題点

政府の教育基本法「改正」案が4月28日国会に上程され、衆議院本会議、「教育基本法に関する特別委員会」等で審議されました。また、その後民主党案の「日本国教育基本法案」が国会に提出されました。これに対し、廃案を求める署名活動や数回に及ぶ国会への請願行動などの国民的運動も活発化し、通常国会では継続審議とさせましたが、12月15日の参議院本会議で与党の賛成により可決されました。

この間の国会の審議を通じて、いくつかの重大な問題点が浮き彫りにさせることができました。
@)3年間、71回も議論したとされる「与党協議会・検討会」の議論の中身が知らされず、今、なぜ教育基本法が改正されなければならないかについて、何ら明らかにされていない問題、
A)「愛国心通知表」をめぐる評価の是非の問題、
B)法案成立後に「教育振興基本計画」等によって実施が予測される全国一斉学力テストについて、すでに実施されている東京都における学校別ランク付けの問題点、
C)東京都等が行っている「日の丸・君が代」の強制の違法性、
D)閣僚らの「教育勅語」賛美の発言など、改悪法案が教育の国家統制を強めていくきわめて重大な問題性をもっていることがあらためて明らかになってきました。

とりわけ重大なのは、新たに第2条(教育の目標)を設け、「国を愛する態度」をはじめとしたいくつもの徳目を「教育の目標」とし、それらの目標の達成を学校や教職員、子どもたちに義務付けていることです。また、現行第10条(教育行政)の条文から「国民全体に対し直接責任を負って行われるべきもの」と「必要な諸条件の整備確立」を削除し、かわりに「この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきもの」(「改正」第16条)という文言を入れ、あらたに第17条(教育振興基本計画)を定めることによって、国や行政の教育への支配統制を厳しく禁じ、国民に直接責任を持つ教育から、法律に従い、国や地方公共団体が行う教育行政が教育の内容にまで介入して支配・統制する教育へと180度転換させていることです。

また、私学教育に影響を与えるということでは、新設の第8条(私立学校)についても、いくつかの点で重大な問題点があります。第8条は一見すると至極当然のことが書かれているように見えます。しかし、冒頭で「私立学校の有する公の性質及び、学校教育において果たす重要な役割にかんがみ…」とあり、ここでいう「公の性質」をもつ私立学校とは、あくまでも「わが国と郷土を愛する態度」などを含む「教育の目標」(「改正」第2条)を達成できる「体系的な教育が組織的に行われる」(「改正」第6条)そのような私立学校のことになります。そして、そのことを評価し、「教育振興基本計画」(「改正」第17条)に基づく教育行政が私学振興としての私学助成を行うという流れを見ていく必要があります。そこでは、例えば「日の丸・君が代」を行う私立学校のみが「公の性質」を有する学校として認知され、私学助成の対象とされることにもなりかねず、私学の自主性が奪われ、国による私学教育への支配・統制につながっていくという点で大いに問題があります。

経営者の一部には条文に「国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。」とあることから、「私学教育が国民教育のひとつを担っていることを証明したことは非常に喜ばしいことである」(衆議院特別委員会参考人質疑での田村哲夫日私中高連会長の発言)などと、これまで「私学助成は憲法違反だ」と言われてきたことに対して、私学助成に一定の法的根拠が与えられたと手放しで法案への賛意を示し積極推進の立場をとっています。しかし、私学助成は憲法違反どころか、憲法第26条(教育を受ける権利、教育の義務)と教育基本法第3条(教育の機会均等)や「法律に定める学校は、公の性質を持つ」と定めた第6条(学校教育)及び「教育行政は・・・必要な諸条件の整備確立」と定めている第10条(教育行政)などの現行法によって根拠づけられており、私たちが「私学も公教育」「教育に公平を、公教育は公費で」のスローガンを掲げ、行政に対して私学助成の拡充を求めている運動の根拠もここにあります。

改悪法案は可決されましたが、今後改悪教育基本法改悪法を具体化させないために全力をつくす必要があります。


(2)私学への統制強化と地方教育行政法改悪問題

改悪教育基本法の私学での具体化として、私学への教育統制の動きが強まっています。

2月25日の中央教育審議会では地方教育行政法「改正」にかかわる議論が行なわれ、私学に対して「専門的な指導・助言・援助について、首長の求めに応じて教育委員会ができるようにする」という提案が文部科学省から行なわれて審議がすすめられています。

こうした提案は、私学教育の存在意義を失わせ、画一的な教育統制に道を開き、ひいては私学の存立をも危うくするものであり絶対に認めることは出来ません。

私学教育に対する教育委員会の介入に道を開く、こうした文部科学省の提案の口実になっているのは、昨秋のいわゆる「未履修問題」です。

従来から、建学の精神にもとづいて教育をするべき私学は、カリキュラム問題でも一定の自主性・独自性が保証され、だからこそ公立学校とはことなる私学の存在意義が発揮されてきました。それは法的には、学校教育法第14条に規定された学校の「設備、授業その他の事項」に対する教育委員会や知事の変更命令権について、私立学校法第5条は「私立学校には、学校教育法第14条の規定は適用しない」と規定され、私立学校法という特別法によって保証されてきたのです。戦後の私学は、私学の自主性を法的に保証するこうした規定に支えられ、学習指導要領の規範としての重要性を踏まえつつ、建学の精神にもとづく具体化をはかりながら教育をすすめてきたのです。

こうした私学教育の独自の存在意義とその法的根拠、従来の取り扱いを知りながら、「未履修が公立より多いことが問題だ」といった俗耳に入りやすい口実をつけて私学に対する教育委員会の「指導、助言、援助」を盛り込もうとする文部科学省の今回の論議は、私学教育を教育委員会の統制下に置こうとする意図によるものにほかなりません。

一部の県の私学行政担当者は、今回の「未履修問題」を私学助成削減の口実にしようとする発言を行ないました。こうした行政関係者の発言はまさに、行政の定めた基準にあわないものを私学助成を通じて統制しようとするものであり、教育委員会の「指導、助言、援助」が法的に盛り込まれた場合に、私学助成・私学行政がどうなっていくかを如実に示しています。

地方教育行政法で私学に対する教育委員会の「指導・助言・援助」の権限盛り込みを阻止するために、全国私教連はいち早く文部科学省への要請とともに各私学団体への要請を行ない、各県でも私学経営者への働きかけを強めています。経営者を含む多くの私学関係者がこうした立法措置に対して批判や危惧を抱いており、何としても地方教育行政法への「指導・助言・援助」の盛り込みを阻止することが必要です。

今後、こうした私学教育への支配・統制に通じる様々な施策や、助成金配分にかかわる動きが予想されますが、そうした一つひとつを機敏に反撃して阻止していくことが必要です。


(3)教育に持ち込まれる競争と格差の広がり

小泉「構造改革」の政治は、この5年間、規制緩和と雇用や社会保障の破壊などの政策をすすめてきた結果、日本の社会に激しい経済格差と社会的不平等をもたらしました。教育の現場にも、規制緩和による激しい競争と経済格差の拡大が持ち込まれるなか、子どもを学校に通わせている保護者の家計収入にも直接影響し、家計を理由に退学せざるを得ない生徒が急増するなど、競争と格差の広がりに深刻な状況が広がっています。

そのような状況を端的に示しているのが就学援助制度の活用者の急増です。この制度の活用者は2000年から2004年度までの5年間で37%も増え、133万人になっています。また、地域間格差もあり、就学援助率の全国平均が12.8%に対し、大阪27.9%、東京24.8%と4人に1人が受給しています。特に東京・足立区では、42.5%と突出して高く、実に半数に近い児童が対象となっています。こうした状況に対し、文科省は05年度では全生徒・児童の4.88%しか予算化しておらず、不足分は各市町村の持ち出しとなっており、多くの地方自治体が財政状況の悪化から認定基準の引き上げを打ち出していることは、教育の機会均等(教育基本法第3条)や憲法第26条で定めた「教育を受ける権利」を著しく制限している点でも大きな問題があるといえます。

全国私教連の調査によると、私立高校の授業料滞納者は、2006年秋の調査で一校あたり平均14.7人と過去最高の2004年の16.8人に次ぐ高水準になっています。高校生がコンビニやスーパーでアルバイトをし、生活費をも稼がなければならない状態もあることが調査から明らかになっています。

教育の規制緩和を先行的に行っている東京都では、学校選択の自由化や小中一貫教育の実施、一斉学力テストや習熟度別の授業の導入などによって、いっそう激しい競争の教育が進行しています。そのため、いくつかの区では、新入生が成績上位校に集中し、反対に新入生がゼロになる学校が出るなど、学校間格差も生じています。また、こうした競争を背景に、児童の進学塾通いにも拍車がかかり、塾に通う子とそれ以外の子の学力格差が広がっている状況もあります。東京近郊の都市の6年生の調査で「通塾児童では22%が算数のテストで90点以上を取ったのに対し、それ以外の子では1%だった」(朝日新聞5月21日付)という結果が出るなど、親の所得の違いで子どもが受けられる教育にも差が生じ、子どもが早くから「勝ち組」「負け組」に振り分けられ、はじめから不公平な競争を強いられるといった状況が進行しています。

進路をめぐっても格差の広がりが深刻な状態にあり、2006年度の調査では、東京のある区では、公立中学卒業生の全日制高校進学率が、1990年代以来始めて9割をきりました。なかには7割台の中学もいくつかあり、授業料の高い私立高校への進学率の落ち込みも目立っています。こうしたところでは、「教室では、いい学校に入る競争と高校に行けるか行けないかという競争の、二つの異質な競争が同居している。互いに友達になりようがない」(同区の中学教師)という状況もあり、格差の拡大と競争が、教育や子どもの心に差別と歪みをもたらしています。

就職についても希望者の就職決定率は91.2%にとどまっており、深刻な就職難は変わらず、地域・男女格差が広がり、不安定雇用が増えていることが日高教と全国私教連の調査からわかりました。調査によると、回答のあった503校中、不安定雇用が増えていると答えたのは193校で、高校生の就職にも派遣や請負の不安定雇用が確実に増えていることがうかがえます。


(4)「競争と管理統制」の教育政策

文科省は、小学6年生と中学3年生を対象に、国語と算数(数学)の「全国一斉学力テスト」を4月に実施しようとしています。学年全員への学力テストは過度の競争を招くとして40年前に中止されましたが、学習指導要領の見直しや「学力低下」批判を梃子に、40年ぶりにこれを復活させようというものです。しかし、前述したように、すでに実施している東京都では、激しい競争と歪みを教師や子どもたちに強いる状況を招いています。また、教育基本法を改悪後「教育振興基本計画」で真っ先にやろうとしているのが、全国一斉学力テストです。しかも今回の学力テストでは、集計を民間業者に丸投げしようとしています。小学6年生では潟xネッセコーポレーションに、中学3年生では旺文社グループと関係のあるNTTデータに、学校名、男女、組、出席番号、名前が記入された回答用紙をそのまま送付することになっています。一斉学力テストに先立って行われた「予備調査」では、児童・生徒の質問調査用紙には「家に本が何冊位あるか」、「家にコンピュータはあるか」「1週間に何日塾に通っているか」など受験産業にとって重要なな質問項目がありました。このような人権侵害、個人のプライバシー侵害にもなりうる調査を受験産業と直結した民間企業に集計をやらせようとしているのです。あらためて、一斉学力調査の中止を強く求めていかなければ成りません。

中教審が打ち出している教員免許の更新制は、現職教員も10年に一度30時間の講習を受け、修了認定されなければ免許が失効するという内容です。しかし、教育基本法改悪案が、現行法第6条2項の「学校の教員は全体の奉仕者」という文言を削除し、国家が定める「教育の目標」(「改正案」第2条)に沿って「絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」(「改正案」第9条 教員)という教員像を描いているこことあわせて考えると、この更新制度は、教員の身分が不安定になるということにとどまらず、国が定めた目標に従わない教員は免許を剥奪し、教員への管理統制を強めていくことにつながるという点で問題です。教員としてその専門性を高め、力量の向上に努めることが必要なのは言うまでもありません。しかし、大切なのはあくまでも自主的・主体的な研修と教特法20条「研修を受ける機会が与えられなければならない」にあるように、教員の権利としての研修保障です。

東京都は依然として、入学式・卒業式における「日の丸・君が代」の生徒と教員への強制を止めていません。これに対し、教職員401名が東京都教育委員会を相手に訴えている裁判(予防訴訟)で東京地裁は昨年9月21日に「『日の丸』に向かっての起立と『君が代』斉唱の義務はない」とする原告の主張を全面的に認める判決を言い渡しました。都は高裁の控訴しましたが、「日の丸・君が代」強制の象徴される都の教育の実態は改悪教育基本法の先にあるものが何かを明示しています。判決がその不当性を断罪したことは大きな意味をもちます。しかし、先日の最高裁では、「君が代」のピアノ伴奏を拒否した教員に対する処分を「有効」とする判断を示しました。

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2.私学をめぐる情勢

(1)生徒減・経営難・リストラとの闘い

昨年12月末に衝撃的な情報が飛び込んできました。秋田の国学館高校で「教員22名の全員解雇とハローワークを使っての22名の教員募集」でした。その後の情報によって、「22名全員の解雇」がないことが明らかになりましたが、ハローワークに教員全員分の22名の募集をかけていることは事実です。情報によれば、募集に応じてきた人と現在の教員を比較して、都合の良い方を採用または継続雇用すると言われています。また、生徒減の中で、全校生徒数が300名をわっており、生徒数が確定する4月末まで、いつ解雇を言い渡されるか分からない状況だと言われています。

また、東京・日体大荏原では、学園側から「1.生徒数250名で収支が合うように計画する。2.教員の持ち時間を平均17〜18時間に設定する。3.借入金の返済については、別途、検討する。上記の課題解決に向けた、3年計画が軸になるが単年度毎にチェックし、改善が進まない場合はその年度をもって学校の存続を断念する。存続の断念とは、次年度からの募集停止対策か、売却・廃校である。」との提案がなされました。

このように生徒減が進行する中で、安易なリストラや、経営放棄による募集停止・学校廃校がおきています。これまでにも、福岡で直方東と日新館、鹿児島で鹿児島学芸と川内純心、北海道・網走、東京・洗足、神奈川・東横学園大倉山などで募集停止・廃校が行われました。広島の祇園高校は、教育特区により株式会社の塾が経営を引き継ぐことになり、祇園高校は廃校になります。

北海道・小樽明峰では、短大の学生減が経営難の根本的な原因ですが、山口の多々良学園に経営介入した徳島の「株式会社タカガワグループ」が、ここでも「再建」と称して経営権を持ち、民事再生に持ち込みました。しかし、短大の07年度募集が少なかったことから、短大の募集停止を決めています。まだ民事再生は審議中であり、予断を許さない状況が続いています。高校も生徒減の影響を受け、1学年が100名を割る状況となっていますが、教職員の奮闘により、昨年並み水準を確保しています。

また、東京・村田女子では、教員を全員解雇して期間3年の契約による雇用に切り替える提案がなされています。東京の麹町学園では、「財務体質の中・長期安定を目指す」として、「消費収支6年連続赤字」、「都からの補助金は減ることはあっても増える可能性は少ない」、「現在人件費は消費収入に対して76〜77%を占めて」いることを理由に、賃金表の改悪により「39歳までは改訂前と同額、40〜57歳は昇給額の削減、57歳以上(現在は65歳)は定昇ストップ」を提案しています。

このような経営側の一方的な経営放棄による廃校やリストラ・労働条件の切り下げを絶対に許すことはできません。財政分析を押し進め、経営者任せの財政改革や教育改革ではなく、組合の主導による教育改革、財政改革を政策化・提案し、真に財政難の場合は経営者との共同による公費助成運動の推進をはじめとして、学園存続の政策を提案することが重要になってきています。

  1994年 2003年 2004年 2005年
サンプル校数 1,288校 1,305校 1,306校 1,306校
入学者数 489,847名 377,260名 373,185名 352,555名
1校当入学者数 380.3名 289.1名 285.7名 270.0名
生徒数(規模別)   学校数 累積率 学校数 累積率 学校数 累積率
100名以下   31校 2.4% 30校 2.3% 32校 2.5%
300名以下   135校 10.5% 146校 11.1% 155校 11.9%
600名以下   436校 33.5% 466校 35.7% 487校 37.3%
800名以下   689校 52.8% 717校 54.9% 728校 55.7%
日私中高連の「調査報告書(平成17年度)」では、10年間における生徒減の状況をまとめています。それによると1994年と比較して、2005年度には全国の私学における入学者総数は、約14万人の減少となっています。それは1校当たり100.3名もの減少であり、2005年度の全校生徒数規模で300名以下の学校が155校(11.9%)と03年よりも20校増えています。同600名以下では487校と03年より51校増の37.3%、同800名以下では728校55.7%と半数を超えています。

私学振興・共済事業団が昨年暮れに発表した「今日の私学財政」の中でも「収容定員充足率(2006年5月1日現在)の分布表が明らかにされていますが、50%未満が187校(05年190校、04年179校、03年169校)15%であり、80%未満の累積では591校47%、100%未満が1023校81%にもなっています。財政状況では、高等学校部門でも、消費支出が消費収入を超えている高等学校が、平成12年度の739校から同17年度の865校に増加しており、消費支出が帰属収入を上回る高等学校も同12年度の424校(1287校中32.9%)から649校(1270校中51.1%)へと増加しています。


【帰属収支差額比率ゼロ・マイナス高校法人が半数に(「私学振興・共済事業団広報2007・2」)】
年度 高校法人数 0%以下 同割合 -20%以下
1995(H7) 644法人 97法人 15.1% 8法人
2000(H12) 637法人 199法人 31.2% 17法人
2005(H17) 626法人 313法人 50.0% 61法人

今、多くの私学が生徒減、定員割れに直面し、生徒確保に必死に取り組んでいます。もちろん、生徒数を確保することは大切ですが、全国の生徒減の中で、自分の学校が全国の中でどの位置にあるかという認識は必要不可欠です。全国における生徒数の減少は、若干のゆるみはあっても大局的には減少傾向は止まらない状況ですから、学校規模の見直しや、学級定員についての見直しが求められているとともに、教育改革・学校改革に組合が積極的に提案し関与することが重要になっています。



3.私学助成をめぐる情勢

(1)小泉構造改革を継承する安倍内閣の文科省07年度予算案

文科省予算は一般歳出総額で前年度当初予算比0.1%増の5兆2743億円に抑えられています。しかし、内容は、よりいっそうの競争の教育を加速するための予算で、「学力調査」に66億円(前年度比37億円増)、「学力向上」に103億円(同22億円増)、「小学校の英語活動」6.2億円(新設)、「学校評価システム」76.3億円(1.8億円増)、「教員免許制度改革」2.2億円(新設)などが並んでいます。しかし、教員増については、生徒減の中での自然減を前提にしており、僅かに「特別支援教育及び食育推進」のために331人の定数増を認めただけで、「教員配置」の予算1兆6659億円は104億円の減額予算になっています。その他にも「放課後子どもプラン」50億円(新設)や「地域の教育力再生」17億円(同7億円増)、「教育分野における再チャレンジ」が160億円(同115億円)が重視されています。

国立大学法人に対する運営費補助は、1兆2044億円と昨年度よりも1710億円(1.4%)減になっています。

(2)私学助成は全体で45億9300万円減(0.9%減)

6月の「骨太方針2006」で「私学助成1%カット、5年間継続」の方針が出され、7月には概算要求基準(シーリング枠)として発表されましたが、結局その枠組みをうち破ることはできませんでした。そのため、私立大学等の経常費補助で32億減(1.0%減)の3280億5千万円にされ、私立高校以下の経常費助成は据置かれましたが、その分「私立高校施設・整備の高度化・高機能化」の予算が242億円→228億円に14億円(5.8%)も削減されました。 08年度予算編成でも、この「1%削減」が行われるなら、私学内の矛盾が増幅し、私立高校以下にも削減攻撃が強まることは必須です。

(3)私立高校以下は昨年同額

私立高等学校以下の私学助成が、06年度の1038億5千万円で据え置かれました。医療・福祉予算がずたずたに削られ、しかも文科省直轄の私立大学の経常費が削られる中での、私立高校以下の経常費助成の据置は、私学助成署名運動や「12・10銀座パレード」など、私たちの運動の大きな成果です。

まだ文科省予算の詳しい中身が発表になっていませんが、生徒減の中での総額の据置ですから、生徒一人当たりの単価は増額になると思われます。

全国で勝ち取ったこの成果を直ちに県当局に伝え、「私学助成を増額せよ」の世論をつくって、増額を勝ち取りましょう。とりわけ、昨年度に発足した「授業料軽減事業特別支援措置」による、生活保護世帯への全額免除の拡大と、授業料助成対象者の拡大を強く県当局に求めていきましょう。

1)私立高校等経常費補助 1,038億5千万円(据置)

  2006年度 2007年度
文部科学省予算 1,038.5億円(5億円0.5%増) 1,038.5億円(据え置き 0%)
地方交付税 5,187億円(37億円0.7%増) 5,187億円(据え置き 0%)
合  計 6,225.5億円(42億円0.7%増) 6,225.5億円(据え置き 0%)


@一般補助 911億76百万(1億77百万円増)
「一人当たり単価」(国基準)
    2006年度 増 額 幅 2007年度 増額幅

高等学校
文部科学省予算 51,360円 891円増 51,960円 600円増
地方交付税 240,100円 3,200円増 241,600円 1,500円増
合  計 291,460円 4,091円増 293,560円 2,100円増

中学校
文部科学省予算 45,273円 567円増 45,548円 275円増
地方交付税 239,200円 3,500円増 240,900円 1,700円増
合  計 284,473円 4,067円増 286,448円 1,975円増

小学校
文部科学省予算 43,638円 549円増 43,898円 260円増
地方交付税 239,200円 3,500円増 240,900円 1,700円増
合  計 282,838円 4,049円増 284,796円 1,960円増

幼稚園
文部科学省予算 21,994円 413円増 22,252円 258円増
地方交付税 136,200円 3,200円増 138,400円 2,200円増
合  計 158,194円 3,613円増 160,652円 2,458円増
★高校では生徒減を反映して、4年連続して文科省補助は総額が▼5億14百万円の508億円ですが、単価で600円増(06年度予算891円増、05年387円増)となりました。
★中学校は文科省補助は総額で3億85百万円の増で110億43百万円の増でした。
★小学校も同様に、文科省補助は総額31億42百万円で1億29百万円の増でした。
★幼稚園については文科省補助は総額259億61百万円で1億47百万円の増でした。

A特別補助 97億85百万円(1億77百万円減)

幼稚園特殊教育経費が26億64百万円で、2億25百万円増。
教育改革推進特別経費は62億15百万円で、昨年に続いて3億38百万円の減になりました。
過疎特別助成は、2億68百万円で、64百万円減、単価は6万6822円と595円増でした。
授業料減免事業等支援特別経費は、6億38百万円に据え置かれています。
その他の「教育改革推進モデル事業」、「広域通信制教育の支援」、「職業教育の支援」は減額、「特定教育方法支援事業」、「特別視円教育の支援」は増額され、その合計は28億89百万円で据え置かれました。

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2007年度運動方針案

1. 子どもと私学教育の未来を築く07私学春闘を
…外にひらき、つながる、共同の力で、私学の将来展望を切り拓こう…

全国の私学で生徒減が進行するなかで、私立高校の廃校、募集停止が始まり、私学経営者の経営放棄とも言える事態が起こっています。廃校や募集停止には至らないまでも、少なくない私学で学費の公私間格差のために大幅な生徒減に見舞われ、入学生が定員割れする私学が増えています。こうした状況は一部の私学経営者を教職員の管理強化や成績給、考課査定導入などの教職員分断に駆り立て、コンサルタントを導入して特進・特色教育路線の一層の強化をすすめ、当面の「健全経営」を実現するための教育条件・労働条件切下げを強行しようとするなど、深刻な「揺れ」を引き起こしています。この「揺れ」は、経営者自身がこの危機を乗り越えていく方策に自信が持てず、現場教職員を信頼しきれないまま、学費公私間格差をかかえた生徒確保競争に、旧態依然とした方策で強迫的に「勝ち残ろう」としている姿と見ることができます。

こうした現状を前に、多くの教職員は将来不安を強く抱えながら、自由にものが言えない職場状況のもと、大きく変貌している生徒実態に直面し、悩んでいます。特に若手教職員は体育系クラブ顧問として土日出勤も多く、8時、9時まで帰宅できないのは当たり前といった仕事量を抱えて授業やクラス指導の悩みを抱えています。

生徒たちは、社会を覆う弱肉強食の「生き残り」競争の風潮と、就職難や社会に出たあとの厳しい職場状況など、未来に夢が持ちにくい社会状況の中で生きづらさを抱え、生きること、学ぶことの意味を深いところで問うています。少なくない生徒が私学の高学費にあえぎ、退学を余儀なくされており、多くの生徒たちは、高学費によって学校で学ぶ権利すら脅かされる仲間を目の当たりにしています。

こうした現状を打開するために、私たちは「ひらき、つながる、共同」を合い言葉に多くの父母、生徒などとの共同の教育運動、私学助成運動をすすめ、大きく前進してきました。

「改悪教育基本法」の職場での現れは、私学の存続不安であり、子育てと悩みと孤立化、そして子ども自身の成長を疎外する学校内外の要因にあります。こうした父母、教職員、生徒とつながり、その力を「格差をなくしてすべての子どもが安心して学べるようにするための私学助成運動(フェスその他を含む)」に収斂していくことが重要です。

今、生徒たちは、こうした私たちとの共同した運動の中で、「学びたいところで学びたいことが学べないのはおかしい!」という新たなスローガンを掲げ始めています。このスローガンは、彼らが学びの主体として、学びと成長の場に大きな学費格差がある問題を鋭く批判したものであるとともに、様々な私学をそこで「学びたいところ」だと評価していること、そしておそらく、一層「学びたいところ」になってほしいという期待を抱いていることをも表現しています。そして彼らの多くは、私学を一層「学びたいところ」にしていくことに、生徒という立場でかかわりたい気持ちも持っているのではないでしょうか。

私たちは、私たちの仕事の場である私学の存続の深刻な危機、そして私学教育の危機に直面しています。そうした私学の危機は、多くの生徒たちが抱える生きづらさや学ぶ権利の侵害、そして父母の高学費による生活難と子育て不安などの問題と深いところでつながり、根を同じくするものです。こうした私学の存続と現場教職員、生徒、父母の直面している課題に向かって、この三者をつなぎながら、誰もが、「学びたいところで学びたいことが学べ」るようにするための条件保障としての抜本的な私学助成を実現していくこと、そして生徒、父母、教職員と私学経営者が共同して、「学びたい」私学教育を作り出していくことこそ、私学の危機を打開していく道です。

改悪教育基本法下で、私学の自由と教育の可能性を遺憾なく発揮した教育実践、学校づくり、父母共同など、いっそう旺盛に展開していくことが求められる。例えば平和教育の多方面からの展開など、私学らしい取り組みが、改悪教育基本法との闘い豊かなものにしていくことが必要です。また、学園危機を分析し、打開の方向について提案できる将来展望を、教職員組合が中心になってつくり、学園の将来不安に真正面から向き合う組合活動、私学春闘とすることが必要です。そしてこの道こそ、私学に改悪教育基本法の導入を阻止し、職場に憲法を守り生かす道でもあるのです。

「高校生の自主活動を除くと後退の一途」という発言が会議でありました。高校生の活躍と対照的に組合活動の活力の低下がすすんでいます。そうしたなか青年をどう組合に迎えるかは組合活性化のひとつの課題です。多くの青年教職員の要求は「ホッとできる居場所がほしい」「将来不安をはなせる場がほしい」「子どもとの関係や教育について話せる場がほしい」というものです。「うちの青年はクラスと部活に閉じ籠っている」という青年論の「分析」にとどまっていては進みません。青年をそこに閉じこめた要因は何か、また組合は青年の人間関係づくりにどれだけ気を配ったか、自分たちの組合は青年に対して「開いているのか」など、一面的な理解を突き抜けた分析と運動を構えていくことが大事です。こうした議論が教職員組合の青年への組織につながっていくのです。また、組合会議、単組の執行委員会、私教連中執会議、父母懇運営委員会など日常的にたくさんの会議が開かれていますが、それらの会議への出席が重荷になったり、意を決して参加しても、会議が重く淀んだ雰囲気だったりすると、もう次からはその会議に出たくなくなります。会議の持ち方について、議題の精選、メリハリのつけ方、各職場課題の議題への出し方、全員が発言できる議題の設定など、会議の活性化について留意していくことです。

私たちは2006年の取組みを通して、私学助成運動と私学のつどいや私学フェスティバルへの生徒の自主的な参加が、多くの父母、教職員そして市民の心を揺さぶり、私学助成運動を大きく動かしました。この上にたって、新しい「すべての子どもに行きとどいた教育をすすめる署名運動(国向け署名運動)」への転換をその力にすることが必要です。そうした取組みが何よりも多くの生徒の成長、輝きにつながり、こうした生徒参加を通して、私学教育を大きく変えていける可能性があることを感じてきました。

こうした到達点にたって、2007年春闘のスローガンとして「子どもと私学教育の未来を築く07私学春闘を…外にひらき、つながる、共同の力で、私学の将来展望を切り拓こう…」を提起します。

危機は、転換期であり変革の時期です。であるとすれば、私学の危機、そして子どもの危機を、私学と教育、子どもの成長にとっての変革の好機にしていくことは可能なはずです。



2.2007年私学春闘の五つのたたかいの柱

(1)父母提携の再生に全力をあげ、「改悪教育基本法」の具体化を許さず、生徒の声を受け止めながら私学の教育改革をすすめる

@ 教育基本法改悪をどうとらえるか
A 父母共同の再生と生徒参加を一層すすめるとりくみを
B 生徒自主活動を一層すすめる


(2)新たな国向けの「ゆきとどいた教育を求める私学助成全国署名」の方針を生かし、国と地方の相乗的な私学助成運動の前進で、国の私学助成削減を絶対に許さず、すべての県で教育格差をなくす私学助成の抜本的な拡充と私学の自由を実現する私学助成運動をすすめる

@ 新たな国向け「ゆきとどいた教育を求める私学助成全国署名」で、すべての県から地元国会議員に要請し、国を動かして、次年度国庫助成削減を許さずその拡充を

A 国向けの「ゆきとどいた教育を求める私学助成全国署名」の具体的な取り組み

  1. 署名目標
    こうした新たな全国署名の方針を受け、私学では多くの父母・教職員、私学関係者を中心とした全国2000万人の全国私学助成署名を集めて国を動かします。そのために各県は自主目標をたてて取り組みます。

  2. 請願項目
    「ゆきとどいた教育を求める私学助成全国署名」の請願項目を次の5項目とします。 (国向け署名の請願項目)
    1. 育予算を大幅に増やして下さい。
    2. 私学の国庫補助制度を堅持し、私学助成を大幅に増額してください。
    3. 私学の教育条件を改善するため、経常費の2分のT助成を実現してください。
      学費の公私立間格差を是正するため、私学に学ぶすべての生徒を対象にした授業料直接助成を実施してください。
    4. 授業料減免事業支援特別経費を拡充してください。

  3. すべての県で、夏に地元国会議員への第一次要請を実施します。
B 県単独分の切り下げを絶対に許さず、私学助成対県獲得目標の実現を


(3)生徒減に抗してすべての私学の発展を

(4)私学の教育改革をすすめるための教育条件改善、教職員の生活と権利を守る要求実現をすすめる

(5)すべての教職員とのつながりなかで組合員拡大をすすめ、青年運動の一層の活性化をはかるとともに全国1,320私立高校の過半数に全国私教連の組合を組織する

(6)憲法改悪、大増税や医療制度・社会保障制度改悪を許さず、憲法・平和・生活を守り政治の革新をはかる



3.2007年私学春闘の三つの重点要求

(1)経済的理由で学校を続けられない生徒をなくし、子どもと私学教育を守る要求

@学園独自の学費減免制度を創設・拡充すること

A私学助成運動での三者協議会(父母、教職員、学校)、四者協議会(生徒、父母、教職員、学校)をつくるなど、私学助成運動で共同すること

B私学助成署名の教室配布を認め、理事長、校長として添書すること


(2)生徒・父母の願いにこたえ、私学の教育改革をすすめる条件をつくる要求

(3)私学教職員の生活破壊を許さず、賃金・労働条件の改善をはかる


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